気ダルい昼休み──
雲ひとつ無く、真っ青に晴れ渡った空はバカみたいに天井が高い。

こういうのがアレだ……あー……っと、抜けるような青空──ってヤツか……?

龍麻は──と言えば、すぐ傍らでお気に入りのいちご牛乳を吸い上げるのにご執心だ。
チラ、と見遣った先で、龍麻の両手にふと目が止まった。

「なァ、龍麻……」
「んー……?」

適当に話しかけてはみたものの、特にこれといった落し所はない。
……やっぱ何でもねェ──と言って、俺は途中まで出掛かっていた言葉をそのまま飲み込んだ。

(そういやァ、コイツ……水泳の授業ン時はどうしてたんだっけ……?)



周囲からは未だに”謎の転校生”などと噂されている龍麻だが、最大の謎はそのグローブの下にあるんじゃないだろうか。
──少なくとも俺が知る限り、龍麻がそのグローブを外したことは一度もねェ。
つーか、この真神でそれを目にしたことのあるヤツがいるのなら、是非とも名乗り出てもらいたいモンだ。

「龍麻……お前も何か、俺たちに隠してる事があるんじゃねェのか?」



最近になって当たり前になりつつある日常──
龍麻がいて、美里がいて……醍醐や、桜井がいる……そんな日々。
何故だか分からねェが、こんな毎日がずっと昔から続いていたような気がすることもある。

……”お友達ごっこ”なんて、俺の柄じゃねェんだけど。

んで、──どうやら俺は、自分でも思った以上にこの、お人好しの相棒に感化されてしまっているらしい。
アイツらの事も、コイツの事も、放っておけねェ……だなんて。



「んー……京一には、僕が何か隠し事してるように見える……?」

意識してか否か、龍麻は質問の答えをはぐらかすように小さく首を傾げて見せた。
ストローを咥えたまま、男にしては大きな目でじっとこちらを見つめ返して来るのが妙に落ち着かない。

「いや、あー……っと、まァ……な」

そのまま見つめ合っているのも変だし、俺はさり気ない風を装って視線を逸らせた。
べ、別に何だ?後ろ暗い所なんかはそのー……そんな、全く、これっぽっちも全然ないんだが……



コイツに出会うまで、誰かを傷付けたくないと思うなら、誰も関わらせなければいいのだ、と──そう思っていた。
それを変えたのは他でもない──お前だから……

「いつかは俺にも、ちゃんと話せよ……?」


京一はもっと、ひーちゃんの事も気にしていればいい。
(初出:2007/04/18)